読書生活 with TOKYO Smart Life

ビジネス本を中心に、読んだ本の感想とちょっとした要約をブログ形式でご紹介

ブチ抜く力 与沢翼 様々な課題に向き合うエッセンス本

 

ブチ抜く力 (扶桑社BOOKS)

ブチ抜く力 (扶桑社BOOKS)

 

 

2014年ごろ、「ネオヒルズ族」として世間からもてはやされた小太りの男、「与沢翼」。美女を侍らせ、ギラギラした若者たちでパーティーに興じる典型的な成金の象徴を”演じて”いた男。その後、彼の経営していた「フリーエージェントスタイル」というなんとも胡散臭い社名の会社は、法人税の未納により解散した。与沢翼について知っている情報はその程度だったが、最近になってドバイを拠点に個人投資家として復活していることをテレビで知った。やはり彼はただの成金ではなかったのだという事実から、彼の生き様に興味を持った。

人の失敗談はとても興味深い。失敗から得たその人の「マイルール」は非常に説得力があるし、汎用性の高い気づきが多い。

本書は過去の失敗について多くは語られていないが、それをバネにドバイでの生活で大きな資産を築いた与沢氏なりの基本原則を、とても分かりやすく紹介している。

私なりに感じたことを以下にまとめたい。

 

【得られるもの】突き抜けるための思考法

【読むべき人】飽き性でいまいち物事が続かない。突き抜けた結果が得られない。

 

 

自分の幸せは「お金」の上に成り立っている事実を認めよ

この事実は多くの人が何となく認識しているものの、なかなか面と向かって認められない事実だ。「幸せはお金じゃない」「お金がなくても幸せに暮らせる」と言えればなんとなくかっこいい。「お金があれば幸せになれるなんて、成金の戯言」だと妬みを込めて言いたくなるものだが、私は与沢氏の考えに賛成だ。やはり我々の多くの「幸せ」はお金で成り立っている。少なくとも最低限の生活とその中の小さな娯楽や幸せの元手は「お金」であることは事実だ。そしてその総量が大きいと、いわゆる一般的なサラリーマンでは経験できないような体験や生活があることは確かだ。この歳(30代半ば)になってようやくわかってきたが、ブランド品や高級品、いわゆる値段が高いものにはやはりそれなりの理由がある。それを体験・経験するかしないかの違いは、人生における幅や深みという点で差は大きいと考える。少なくとも私個人としては、お金の総量は多いに越したことが無いという点で、与沢氏のこの考えに大きく賛成だ。

 

センターピンを掴む 物事に本質を捉える

私が考える本当に頭がいい人は、物事の本質を早く的確に捉えられる人だと思う。そういう人が集まる組織は意思決定に無駄な忖度や蛇足がなく、スピーディに動ける集団になるはずだ。ただし、組織の意思決定は本質的に正しい(確度が高い)ことに収れんするとは限らない。それぞれ立場の違いによって重視するものが違うし、上からの評価を気にするあまり忖度に忖度を重ねた、何が言いたいのかわからない結論を導き出したりする組織を私自身多く見てきた。

組織の意思決定は別として、個人として何かを決断する、本質を捉える(=センターピンを掴む)というプロセスを与沢氏はしっかりと体系化していて、再現性のあるパターンとして持っている。ここだけでも非常に価値のある章である。

 

勝負はチャンスが訪れる前から始まっている

「流れ星に願い事を3回言えれば叶う」という迷信。これの本当の意味は「コンマ何秒の一瞬で3回も夢を語れるぐらい、自分に夢の存在が染みついているか」を例えた話だそうだ。

与沢氏の「勝負はチャンスが訪れる前から始まっている」という一文はまさにその通りだ。「こういう状況はチャンス」であって「チャンスの状況にはこういう行動をする」というシミュレーションを常日頃持っていれば、いつくるかわからない一瞬のチャンスも掴める確率は格段に高くなる。

私は「投資」をテーマにした情報を読むのが好きで、最近はプライベートバンカーや与沢氏のような個人投資家の思考法に関する本をよく読んでいる。どれほど優秀なファンドマネージャーであっても勝ち続けることはなく、当然に負けも経験している。凡人との違いは、失敗の本質を捉えて「やらないこと」を決め、勝率を上げることを日々積み重ねている。誰しも自分の失敗には向き合いたくないものだが、ただの失敗として忘れてしまうのは非常にもったいないことだと気づかされた。

自由に使える10億円があれば、どう使うか?

もうひとつ思考の幅を広げるテーマ。自由に使える10億円があれば、どう使うか?」金額は100億円でも1000億円でも良い。これは自身の資産のポートフォリオを常に考えているか否かを問われているテーマだ。また、どうすれば資産を守りながら増やせるかという投資のセンスを磨くのに優れたお題だと思う。私は投資はその人の人柄、「センス」が出るテーマだと思う。アグレッシブな人ほどアクティブ投資をするし、堅実な人は伝統的な投資商品を好む傾向がある気がする。大きな金額を動かす妄想はとても楽しいし、ただの妄想で終わらせない数字的な論理、根拠を積み上げれば、これは立派な「チャンスへの準備」になるはずだ。

 

投資とは大衆が後から評価するものを先回りするゲーム

多くの人がまだ知らないバンドや漫画、自分しか知らないような名作・名店を見つけたときの優越感。投資とはそんな「隠れた名作」に昼飯を賭けるようなものなのかもしれない。ただし1000円や2000円ではなく、何万円、何百万円を、ギャンブル的にではなくしっかりとした根拠をもってベット(投資)する。それが当たれば大きなリターンが得られるし、外れれば投資金を失うかもしれない。しかし投資はカジノのように赤か黒か、半か丁かの確率を賭けるゲームではない。投資先の情報を分析して、タイミングを計って投資して、ルールを決めてEXIT(利確)する。

与沢氏の例えは、まだ投資を経験していない人に対して投資の本質を伝えるうえでとても分かりやすい一文だと感じた。

 

情報収集も3週間。「ひとり突っ込み」繰り返し、センターピンを捉える

新しいことを始めるときにはまず情報収集をすることが多いが、それについて体系化している人は少ないのではないだろうか。期限やスケジュールを決めて短期間で調べつくして一気に「セミプロ」の領域までもっていく。この方法は非常に納得できる。資格の勉強をしているときなんか最たるものだが、自分が徐々に知識を付けてステップアップして、最終的に資格という公的な称号を得る。この過程は非常にエキサイティングで面白い時間だ。ひとつの問題は、それが自分がそのテーマに興味を持ててモチベーションが保てるかどうか。とくに答えのないテーマを取り扱う際は、短期間で一気に吸収して、自分で自分の意見に突っ込みを入れながらブラッシュアップしていくプロセスは、ぜひ実践していきたい勉強の基本姿勢だと思った。

 

途中、与沢氏が-22㎏のダイエットに関する彼なりのノウハウもあったが、今回は割愛する。

 

いずれにしても、投資に限らず日常の様々な課題やテーマに向き合う際の自分なりの「スタンス」のパターンとして与沢氏の思考は非常に参考になると思う。

個人的には本の表紙に与沢氏が前面に出ているのは如何かと思うが、これも彼なりの「ブチ抜き」の一環なのかもしれない。総評としては「オススメ」です。

★★★★★ 95点